薗田碩哉の遊び半分

大きな栗の木の下で

 さんさん幼児園の園舎は、大きな長方形の弁当箱みたいな建物で、平たい屋根の2階部分は柵で囲まれ、東側の半分には薗田の住む和風の家が置かれ、西の半分は何もない広場になって、子どもたちが上がってきて遊んだり、お弁当を食べたりする空間だった。

建物の西側には川辺から大きな栗の木が立ちあがっていて、その広場の上にいくつもの枝を差し伸べて木陰を作ってくれていた。冬には葉のない枝の間から日光が降り注ぎ、夏には厚く茂った枝が重なりあった緑陰で、みんなで涼しく遊ぶことができた。

栗

夏の終わりになると、枝という枝に緑の栗のイガが並び、やがて黄色く色づいて口が開いて栗の実が落ちてくる。みんな頭に鍋をかぶって竿を振るい、栗の実を叩き落して集めた。イガから栗の実をはずすのが一苦労、その実の厚皮を剝いて黄色い食べどころを取り出すのがなかなか根気のいる仕事だった。栗の実を配ってそれぞれの家で剥いてもらって、それらをもう一度集めてもち米と一緒に炊いて「栗ご飯パーティ」をやるのが恒例だった。

幼児園は終わってしまったが、栗の木は相変わらず元気に毎年の営みを繰り返している。枝が延びすぎて大枝を切り落としてトリミングしたので、栗の木としては迷惑だったろうが、根本が一抱えもある栗の大木は、毎度の大嵐にもめげずに立ち続けている。かつて子どもたちがはしゃぎまわっていた2階のテラスは、今や花の鉢や野菜ポットが並ぶミニ農園になって、元園長先生は、それらの世話に余念がない。

栗の木の下に佇みながら、むかし何度も何度も歌った「大きな栗の木の下で」を口ずさんでみた。この句に続けて、栗の木の下の思い出を童謡風につづったのが以下に掲載する「さんさん版・大きな栗の木の下に」である。

大きな栗の木の下で

大きな栗の木の下で
あなたとわたし 仲良く遊びましょう…

大きな栗の木の下は
むかしは楽しい幼児園
のっぽもちびも泣き虫も
みんな木陰でお弁当

大きな栗の木の下に
子どもの国が生まれます
走って笑ってずっこけて
やがて始まるおままごと

大きな栗の木の下で
おとなは夜のミーティング
こずえの先の月のもと
語りは尽きぬ夜更けまで

大きな栗の木の下に
栗の実いっぱい落ちました
痛くてつらいイガ外し
根気比べで皮をむく

大きな栗の木の恵み
栗の実集めて大鍋で
炊けばおいしい栗ご飯
みんなで仲良く食べましょう。

大きな栗の木の下は
今やわが家のサロンです
天気の良い日はレストラン
暑い夏場はビヤホール

大きな栗の木の下に
園芸ポットが並びます
ナスにキュウリにトウモロコシ
薔薇もあちこち咲いてます

大きな栗の木の下を
あなたと一緒に生きてきた
たくさんの日々の色どりは
おんなじようでみな違う

大きな栗の木の下は
むかしといまの交差点

2021年8月16日 薗田 碩哉

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